第175回

酒鬱とは?お酒で落ち込む原因・なりやすい人の特徴と治し方を解説

酒鬱とは?お酒で落ち込む原因・なりやすい人の特徴と治し方を解説

「お酒を飲んだ翌日、理由もなく気分が沈む」「酔いがさめると、強い不安や自己嫌悪に襲われる」といった経験はありませんか。

飲んでいるときは楽しいのに、あとになってひどく落ち込む状態は「酒鬱(さけうつ)」と呼ばれることがあります。つらさの原因は、心がけや性格の弱さではなく、アルコールが脳や気分に作用した結果です。

この記事では、酒鬱とは何か、なりやすい人の特徴や主な症状を解説したうえで、受診の目安をはかるセルフチェックと、今日から始められる4つの治し方を解説します。

飲酒後の落ち込みに悩んでいる方は、自分の状態と照らし合わせながら読んでみてください。

酒鬱(さけうつ)とは「お酒で気分が落ち込む状態」のこと

酒鬱(さけうつ)とは「お酒で気分が落ち込む状態」のこと

酒鬱(さけうつ)とは、飲酒が原因で気分が落ち込む状態のことです。

お酒を飲んだ翌日に、理由もなく沈んだり、強い不安や自己嫌悪を感じたりするのが特徴で、正式な医学的病名ではなく俗称として使われています。落ち込みは、特に酔いがさめるときや翌日に強く現れます。

ここで知っておきたいのは、酒鬱は意志の弱さや性格のせいで起こるのではないという点です。アルコールという物質が脳や気分に直接作用して生じる、体の反応です。

飲んだ翌朝に強い後悔や憂うつを感じるのも、心がけの問題ではありません。まずは自分を責めず、原因を正しく知ることが解決につながります。

二日酔いと酒鬱との違い

似たものに二日酔いの落ち込みがありますが、両者の違いは「繰り返すか」と「生活に支障が出ているか」にあります。

二日酔いの後悔は多くの人が経験するもので、時間がたてば回復します。一方、飲むたびに気分が沈む、落ち込んだ状態が何日も続く、仕事や人間関係に影響が出ているといった場合は、酒鬱のサインかもしれません。

お酒で気分が落ち込む理由は主に次の3つです。

理由内容
1:反動による抑うつアルコールは一時的に不安を和らげるが、酔いがさめると反動で以前より強い抑うつ気分が出やすくなる
2:睡眠の質の低下アルコールは眠りを浅くし、夜中に目を覚ましやすくする。睡眠不足が翌日のだるさや落ち込みにつながる
3:依存性飲み続けると脳に依存の回路が作られ、量が増えて気分の落ち込みも繰り返しやすくなる

なお、厚生労働省のガイドラインでも、不安や不眠を紛らわすための飲酒は避けるべき飲み方とされています。一時的に楽になっても、長期的には酒鬱を悪化させる原因になります。

参考:健康に配慮した飲酒に関するガイドライン|厚生労働省

酒鬱の主な症状と特徴

酒鬱の主な症状と特徴

酒鬱の症状は、大きく上記の3つに分けられます。

ここでは、それぞれの症状の特徴と、なぜそれが起こるのかを解説します。

参考:うつ病とアルコール|あま市

精神的な症状(抑うつ感・情緒不安定・自己嫌悪)

酒鬱の精神的な症状

酒鬱の代表的な精神症状は、飲酒後の強い抑うつ感・情緒不安定・自己嫌悪です。

これは、アルコールが一時的に不安を和らげる一方、酔いがさめると反動で以前より強い抑うつや不安が出るために起こります。「飲んでいるときは楽しかったのに、翌朝はひどく落ち込む」という落差が、酒鬱の特徴です。

具体的には、理由のない気分の沈み、イライラや涙もろさといった情緒の不安定さ、「なぜあんなことを言ったのか」という過度な自己嫌悪などが現れます。こうした気分の波は、本人がつらいだけでなく、人間関係にも影響しかねません。

飲酒のたびにこの状態を繰り返す場合は、酒鬱のサインと考えられます。

身体的な症状(動悸・不眠・頭痛・倦怠感)

酒鬱の身体的な症状

酒鬱では、精神面だけでなく身体的な不調も現れます。代表的なのが、動悸・不眠・頭痛・倦怠感です。

これは、アルコールが体から抜ける際に、動悸や発汗、頭痛、吐き気といった不調が出ることがあるためです。

さらにアルコールは眠りを浅くし、夜中に目を覚ましやすくするため、睡眠の質が下がります。その結果、翌日に強いだるさが残ります。

体調の悪さは気分の落ち込みをさらに強め、「体もつらい、心も沈む」という悪循環につながりやすくなります。

精神症状と身体症状が重なって出ている場合は、体からの注意信号と受け止めることが大切です。

行動面の変化(飲酒量の増加・お酒のあとの後悔)

行動面の変化(飲酒量の増加・お酒のあとの後悔)

酒鬱は、飲酒量の増加やお酒のあとの後悔といった行動面の変化としても表れます。

「つらさを紛らわすために飲む→さめると落ち込む→また飲む」という悪循環に入ると、飲酒の量や頻度が増えていきます。

具体的なサインは、「飲まないと眠れない」「気づくと量が増えている」「酔ったときの言動を後悔する失敗を繰り返す」などです。こうした後悔は自己嫌悪を強め、落ち込みをさらに深めます。

行動の変化は自分では気づきにくいため、客観的に振り返ってみてください。

酒鬱になりやすい人の3つの傾向

酒鬱になりやすい人の特徴

ここでは、酒鬱や飲酒の問題が起こりやすい3つの傾向を解説します。

1:ストレスや不安をお酒で紛らわせがちな人

ストレスや不安をお酒で紛らわせがちな人

ストレスや不安を解消する目的でお酒を飲む人は、酒鬱になりやすい傾向があります。

不安や不眠を紛らわすための飲酒は、量の調節がきかなくなりやすく、依存につながりやすいからです。お酒を眠剤や安定剤の代わりに使うような飲み方は、特に注意が必要とされています。

たとえば「嫌なことがあった日は必ず飲む」「飲まないと眠れない」という人は、お酒が問題への対処手段になっている状態です。

お酒以外のストレス対処法を持つことが、酒鬱の予防になります。

2:もともと気分が落ち込みやすい・まじめで頑張りすぎる人

もともと気分が落ち込みやすい・まじめで頑張りすぎる人

気分が落ち込みやすい人や、まじめで頑張りすぎる人も、酒鬱に注意が必要です。

うつ的な気分を抱える人が、つらさを紛らわすために飲酒を始め、習慣になるケースがあります。

ただし、これは性格の弱さではなく、まじめさや責任感の強さが裏目に出ているだけです。

自分を責めるのではなく、早めにお酒との距離を見直してみてください。

3:飲酒量が多い・飲む頻度が高い人

飲酒量が多い・飲む頻度が高い人

飲酒量が多い人や飲む頻度が高い人は、酒鬱や依存のリスクが上がります。

飲み続けると耐性ができ、同じ量では物足りなくなって酒量が増えていくためです。量が増えるほど、脳や気分への影響も大きくなります。

また、アルコールの影響は体質によって変わります。女性・高齢者・お酒に弱い人は、少ない量でも影響を受けやすいとされ、より注意が必要です。

「自分はどのくらい飲んでいるか」を一度振り返り、純アルコール量で把握してみることをおすすめします。

酒鬱かも?医療機関を受診する目安をセルフチェック!

酒鬱で医療機関を受診する目安のチェックリスト

「自分は酒鬱かもしれない」と感じたら、まずは上記のチェックリストで状態を振り返ってみましょう。

チェックの数による目安は、次のとおりです。

チェックの数による目安

特に注意したいのは、リスト後半の4項目(記憶が飛ぶ、量を抑えられない、お酒以外に楽しみがない、周囲から指摘される)です。これらはアルコール依存症の代表的なサインとされており、複数当てはまる場合は依存が進んでいる可能性があるため、注意しましょう。

参考:アルコール依存度チェック|肥前精神医療センター

酒鬱の4つの治し方

酒鬱の4つの治し方

ここでは、酒鬱を改善するための4つの方法を、取り組みやすい順に紹介します。

1:休肝日・適量を意識する

休肝日・適量を意識する

酒鬱の改善でまず取り組みたいのが、飲酒量を減らし、お酒と距離をとることです。飲む量そのものが減れば、脳や気分への影響も小さくなります。

具体的には、週に2日の休肝日が推奨されています。いきなりは難しいので、まずは週1日から始め、できれば連続2日を目指すとよいでしょう。

あわせて、自分の飲酒量を「純アルコール量」で把握することも大切です。

純アルコール量は「お酒の量(mL)×度数÷100×0.8」で計算でき、節度ある適度な量は1日約20gが目安とされています。女性や高齢者、お酒に弱い人はより少なめが望ましいです。

飲む合間に水をはさむと、飲酒量を抑えやすくなります。

参考:健康日本21|厚生労働省

2:睡眠の質を上げてストレスをためる前に対処する

睡眠の質を上げてストレスをためる前に対処する

睡眠の質を整えることも、酒鬱の改善に役立ちます。

寝るためのお酒、いわゆる寝酒は逆効果です。アルコールは眠りを浅くし、早朝や夜中に目を覚ましやすくするため、かえって睡眠の質を下げてしまいます。睡眠不足は気分の落ち込みを強めるので、お酒に頼らず眠る工夫が必要です。

また、ストレスと飲酒量には強い関わりがあります。ストレスがたまるほど飲酒量も増えやすいため、限界までため込む前に対処しましょう。

お酒を飲まないと眠れない状態が続く場合は、生活リズムの見直しから始めてみてください。

3:お酒以外のストレス解消法をもつ

お酒以外のストレス解消法をもつ

お酒以外のストレス解消法を見つけることは、酒鬱の予防と改善の両方に役立ちます。

気晴らしのための飲酒は量の調節がきかなくなりやすく、心身ともに危険です。お酒だけが息抜きになっていると、つらいときに飲酒へ向かう習慣が強まってしまいます。

たとえば、軽い運動、趣味の時間、信頼できる人との会話など、お酒に頼らない気分転換をいくつか持っておくとよいでしょう。まずは「自分にとってのストレスは何か」を知り、その対処法を考えることから始めます。

解消法が複数あれば、お酒への依存度を抑えられます。

4:つらいときは心療内科・精神科に相談する

つらいときは心療内科・精神科に相談する

セルフケアで難しいと感じたら、ひとりで抱え込まず専門家に相談してください。

飲酒を抑えられないのは、意志や性格の弱さではなく、病気の症状です。治療やサポートの対象であり、相談することは決して恥ずかしいことではありません。

主な相談先には、心療内科・精神科のほか、各自治体の保健所、精神保健福祉センターなどがあります。すでに治療中の人は、薬とお酒の飲み合わせに危険があるため、必ず主治医に相談しましょう。

まとめ

まとめ
  • ・酒鬱は飲酒が原因で気分が落ち込む状態を指す俗称で、意志や性格の弱さではなくアルコールによる体の反応
  • ・抑うつ感などの精神症状、動悸や不眠といった身体症状、飲酒量の増加といった行動の変化が主なサイン
  • ・なりやすいのは特定の性格ではなく、ストレスを飲酒で紛らわせるなど特定の飲み方や状況にある人
  • ・飲むたびに落ち込む、何日も気分が沈む、生活に支障が出ている場合は注意が必要
  • ・改善には休肝日・適量・睡眠・お酒以外のストレス解消が役立ち、つらいときは専門家への相談を

酒鬱は、お酒を飲んだ翌日や酔いがさめたときに、強い落ち込みや不安、自己嫌悪となって現れます。

飲み方を見直し、お酒以外の気分転換を持つだけでも、状態は変わっていきます。それでもつらさが続くなら、背景に依存やうつが隠れていることもあるため、注意が必要です。

「飲むたびに落ち込む」「お酒の量が抑えられない」と感じたら、ひとりで抱え込まず、心療内科・精神科に相談してみてください。

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