なんとなく頭がぼんやりして、思考や集中がうまくいかない。
そんな状態が続いているなら、それは「ブレインフォグ」かもしれません。
ブレインフォグとは、脳のパフォーマンスが一時的に低下した状態を指します。
本記事では、ブレインフォグの主な症状と原因、対処法について解説します。
頭にモヤがかかった感じがずっとしている方は、ぜひ参考にしてください。
【セルフチェック】これってブレインフォグ?主な症状を確認しよう
「頭がスッキリしない」「集中できない」と感じる状態は、ブレインフォグの可能性があります。
ここでは、主な症状を4つのカテゴリーに分けて紹介します。
思考力・集中力の低下に関する症状
このような症状は、ブレインフォグの中でも特によく見られる特徴です。
思考のスピードが鈍くなり、普段ならスムーズにできていた作業に時間がかかるようになります。
注意力が低下し、集中力を必要とする場面ではパフォーマンスの質が落ちる傾向も見られます。
こうした変化は本人にとっても明確に自覚しやすく、日常生活での違和感として現れやすいのが特徴です。
記憶に関する症状
上記のような記憶に関するトラブルも、ブレインフォグによく見られる症状のひとつです。
特に影響を受けやすいのが、短時間だけ情報を記憶する「短期記憶」の領域です。
たとえば、人に何か頼まれてすぐに忘れてしまったり、覚えたばかりの情報が頭から抜けてしまったりすることが増えます。
また、相手の名前や予定をうっかり思い出せない場面が多くなることもあります。
年齢的な物忘れとは異なり、日常の中で違和感を覚えるレベルで頻繁に起こるのが特徴です。
言語に関する症状
言葉がすぐに出てこない、話したいことをうまく表現できないといった言語面での不調も、ブレインフォグに見られる症状です。
会話の途中で言葉に詰まったり、物の名前がとっさに思い出せず「あれ」「それ」で済ませてしまうことが増える傾向があります。
また、読み書きに対して苦手意識が強まり、メールや資料作成などが以前よりも負担に感じることも。
こうした症状が続くと、コミュニケーション自体がストレスの原因となり、人と接することに消極的になるケースもあります。
倦怠感やその他の身体症状
ブレインフォグは精神的な症状だけでなく、身体面にもさまざまな不調をもたらします。
特に多いのが、十分な睡眠をとっても疲れが取れず、朝から強い倦怠感が残る状態です。
日中も慢性的な眠気が続き、活動量が低下してしまうことがあります。
また、原因がはっきりしない頭痛やめまい、視界のぼやけといった症状が現れることもあり、これらは脳の機能低下が身体全体に影響しているサインと考えられています。
ブレインフォグが起こる主な原因6つ
ブレインフォグは、心や身体の状態、生活習慣など複数の要因が重なって生じます。
ここでは代表的な6つの原因を紹介します。
参照:新型コロナウイルスの脳後遺症 ブレインフォグの診断と治療|女子栄養大学
1:ストレスや精神的な疲労
強いストレスや精神的な疲れは、脳の働きを鈍らせる大きな要因です。
緊張状態が続くと、脳はリラックスする時間を持てず、思考力や集中力に支障をきたすようになります。
心が休まらない日々が続くことで、頭が重く感じるようになり、気づかないうちにブレインフォグへとつながっていきます。
2:生活習慣の乱れ
脳の健康を保つには、良質な睡眠と栄養が欠かせません。
寝不足が続けば、情報整理や回復のプロセスが滞り、翌日の集中力に影響が出てしまいます。
また、栄養バランスが崩れると、思考が鈍ったり、判断力が落ちたりすることも。
忙しさにかまけた食事の乱れが、知らぬ間に脳のパフォーマンスを下げていることもあります。
3:自律神経の乱れ
自律神経は、体の機能を裏で支える存在です。
交感神経と副交感神経がバランスよく働くことで、心身は安定した状態を保てます。
しかし、ストレスや不規則な生活によってこのバランスが崩れると、脳は常に緊張状態に。
血流や酸素の供給が滞り、頭の中がぼんやりしてしまう原因となります。
4:新型コロナウイルス感染症の後遺症
新型コロナの回復後、「頭が働かない」「物事に集中できない」といった症状が続くことがあります。
これは後遺症のひとつとされ、脳への炎症や免疫異常が関係していると考えられています。
加えて、長引く療養や社会復帰への不安が重なり、脳のパフォーマンスが著しく低下するケースも少なくありません。
5:うつ病などの精神疾患
うつ病や不安障害といった心の病が、ブレインフォグの背景にあることもあります。
思考が前に進まない「思考制止」と呼ばれる症状は、まさに脳が働きにくい状態の典型です。
意欲の低下や感情の変化を伴う場合は、単なる疲労ではなく、治療が必要な状態が隠れている可能性もあります。
6:更年期や生理周期によるホルモンバランスの変化
女性の体は、ホルモンの変動に大きく影響を受けます。
エストロゲンの急激な減少が起こる更年期には、認知機能の低下を自覚しやすくなることも。
月経前や妊娠・出産など、ホルモンの波が大きい時期にも、一時的な思考の鈍さや集中力の低下が見られる場合があります。
ブレインフォグの4つの対処法
ブレインフォグは、生活の中のちょっとした工夫で改善が期待できる場合があります。
ここでは、今日から無理なく取り入れられる4つの対処法を紹介します。
1:質の良い睡眠を十分にとる
脳の回復には、深く安定した睡眠が欠かせません。
寝る・起きる時間を毎日できるだけ一定に保つことで、体内リズムが整いやすくなります。
また、寝る直前のスマートフォンや強い光は避けたいところ。
ぬるめの入浴や静かな音楽などで、心身をリラックスさせてから眠りにつくのが理想です。
質の良い睡眠をとることが、モヤモヤした頭をリセットする近道となります。
2:栄養バランスの取れた食事を心がける
食事の内容は、そのまま脳の働きに反映されます。
パンや麺だけで済ませるのではなく、主菜・副菜・汁物のそろった定食スタイルを意識すると、自然と栄養バランスが整っていきます。
特に、ビタミンB群や鉄分、青魚に含まれるDHA・EPAは、思考の冴えに関わる重要な栄養素。
まずは三食をきちんと食べることから始め、脳に必要なエネルギーをしっかり届けましょう。
3:軽い運動を習慣にする
軽めの運動は、脳の血流を促し、思考をスッキリさせる助けになります。
ウォーキングやヨガ、軽いストレッチでも十分。
継続することで、脳を活性化させる神経伝達物質・セロトニンの分泌も促されます。
「一駅手前で降りて歩く」「寝る前に体をほぐす」など、無理なく続けられる範囲から始めてみましょう。
4:リラックスする時間を作る
ストレスがブレインフォグの原因となっている場合は、意識的に心を緩める時間を設けることが大切です。
たとえば、音楽を聴きながらお茶を飲む、自然の中をゆっくり歩く、誰かと気持ちを共有する。
そんな些細なことが、脳にとっての休息になります。
「気持ちが軽くなる行動」を見つけておくと、心のバランスも取りやすくなります。
症状が改善しない場合は医療機関へ相談しよう
セルフケアを続けても頭のモヤモヤが晴れず、生活に支障が出ている場合は、医療機関への相談を検討しましょう。
また、気分の落ち込みや不眠といったうつ症状が伴う場合も、早めの受診が勧められます。
受診する診療科は、症状の内容によって異なります。
迷ったときは、まずかかりつけの内科に相談するとスムーズです。
・ストレスや気分の不調が気になる:精神科や心療内科
・頭痛やめまいが強い:脳神経内科
・コロナの後遺症が疑われる:後遺症外来
・更年期の影響が考えられる:婦人科
医療機関では、カウンセリングによる心理的サポートのほか、必要に応じて薬物療法やTMS(経頭蓋磁気刺激)といった治療が検討されることもあります。
参照:“最後の課題”新型コロナ後遺症治療の最前線 電磁波で脳を活性化 「ブレインフォグはなぜ起こるのか?」原因に迫る臨床研究の現場に密着【news23】|TBS NEWS DIG
まとめ
- ・ブレインフォグは脳の働きが一時的に低下し、集中力や記憶力の低下、倦怠感などが現れる状態
- ・原因にはストレス、生活習慣の乱れ、自律神経やホルモンの変化、コロナ後遺症、精神疾患などがある
- ・睡眠・食事・運動・リラックスの習慣を整えることで、多くは改善が期待できる
- ・セルフケアを1〜2週間続けても改善しない場合や、生活に支障が出る場合は医療機関へ
- ・診療科が分からない時は、まずかかりつけ医に相談し、適切な科を紹介してもらうとよい
ブレインフォグは、誰にでも起こりうる身近な不調です。
「なんとなく調子が出ない」と感じた時点で、自分の状態を見直し、できることからケアを始めることが大切です。
無理をせず、必要に応じて専門家の手を借りながら、少しずつ脳のクリアな状態を取り戻していきましょう。