「嬉しいのか悲しいのか、自分でもよくわからない」「人の気持ちにうまく共感できない」
このような戸惑いを抱えたことはありませんか。
もしかすると、それは「失感情症(アレキシサイミア)」と呼ばれる状態かもしれません。
この記事では、失感情症の特徴や原因、セルフチェックの方法を解説します。
失感情症と関連深い心の病気や向き合い方についても紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
失感情症とは「自分の感情に気づきにくい」状態のこと

失感情症(読み方:しつかんじょうしょう)とは「自分の感情をうまく認識したり、言葉で表現したりすることが難しい状態」を指し、アレキシサイミアと呼ばれることもあります。
失感情症は感情がないわけではなく、心の中に分厚い霧がかかって、嬉しいのか悲しいのか、自分でもよくわからなくなる状態です。
この特性は人口の約1割が持っているとも言われています。
参考:アレキシサイミアとは何か|村松太郎、厚生労働科学研究成果
失感情症の主な症状・特徴

失感情症の傾向がある人には、上記のような特徴が見られます。
また、感情がわかりにくいだけでなく、考え方や人との関わり方にも影響が出ることがあります。
失感情症の主な原因
失感情症の原因は、一つだけではありません。
下記のような「先天性の要因」と「後天性の要因」が複雑に重なり合って現れると考えられています。


【12の質問】失感情症セルフチェックリスト
次の項目のうち、当てはまるものにチェックを入れてください。


上記は医学的な診断ではないものの、自分の心の状態を客観的に見つめるきっかけになります。
8項目以上当てはまった場合
感情に気づくアンテナが少し鈍くなっているかもしれません。
ストレスが溜まっていたり、心が疲れていたりするサインの可能性があります。
4〜7項目当てはまった場合
特定の状況やストレスによって、一時的に感情がわかりにくくなっているかもしれません。
3項目以下だった場合
現在のところ、感情の認識と表現のバランスは比較的よく保たれているようです。
失感情症と関連の深い心の病気
| 関連する心の病気 | 失感情症との関係性 |
|---|---|
| 発達障害 (特に自閉スペクトラム症) | 他人の気持ちを想像したり、曖昧な感情を読み取ったりすることが苦手な傾向がある |
| うつ病・不安障害 | 自分のネガティブな感情に気づけないままストレスを溜め込み、心のエネルギーが尽きてしまうことで発症につながることがある |
| 心身症 | 言葉にできない心の負担が、頭痛・腹痛・めまいなど身体の症状として現れる |
失感情症は病気ではありませんが、「感情に気づきにくい」という特性が、ほかの心の不調や病気と結びつきやすいことが知られています。
失感情症の傾向がある人はストレスが蓄積しても気づきにくいため、気づいたときには心や体が限界に達しているケースも少なくありません。
だからこそ、「少し疲れているかも」と感じた段階で、一度立ち止まることが大切です。
失感情症との向き合い方を3つの観点で解説!
ここでは、失感情症との向き合い方を上記の3つの観点で解説します。
1:感情に気づくためのトレーニング

感情に気づく力は、意識して練習することで少しずつ育てていくことが可能です。
上記のようなトレーニングをしてみましょう。
日々の中で「自分は今どう感じているのかな?」と考えてみるだけでもOKです。
2:ストレスを上手に減らすための習慣

感情に気づきにくくなっている分、意識してストレスをケアすることが大切です。
日常の中で「体をゆるめる」「動く」「休む」という3つを意識するだけで、心は少しずつ整っていきます。
自分なりのストレス解消法を見つけておきましょう。
3:周りの人との関係を楽にする伝え方

感情表現が苦手なことで生じる、周りの人との誤解や気まずさを減らすためのコミュニケーションの工夫をまとめました。
感情表現が苦手でも、誠実さや思いやりは行動で十分に伝わります。
大切なのは、完璧に話すことではなく自分のペースで関わることです。
少しずつ自分らしい伝え方を見つけていきましょう。
まとめ
- ・失感情症(アレキシサイミア)は、感情に気づきにくくなる特性であり、病気ではない
- ・原因には、脳の特性や発達傾向などの先天的要因と、ストレス・トラウマなどの後天的要因が関係する
- ・セルフチェックで感情に気づきにくいサインを把握できる
- ・発達障害・うつ病・心身症など、他の心の不調と関連することがある
失感情症は、誰にでも起こりうる心のサインです。
まずは今の自分を受け入れ、心の声に耳を傾けていくことを大切にしましょう。
もし、どうしてもつらいときは、一人で抱え込まずに精神科・心療内科へ相談してください。








