認知行動療法とは?自分で出来る人や向かない人について解説

皆さんは「認知行動療法」をご存知ですか?

我々は日常的に物事を主観的に判断します。

しかし、その判断には人によってクセがあるために、同じ言葉にしても、ポジティブに受け取る人もいれば、ネガティブに受けとる人もいます。

人間関係におけるトラブルもこの認知の違いによって生じます。

「認知行動療法」とは、お医者さんや、カウンセラーなどによって、この認知の歪みを捉え、有効的なアドバイスをもらい、自分の行動に生かすという心理療法の一つです*1

A search of the literature resulted in a total of 16 methodologically rigorous meta-analyses. Our review focuses on effect sizes that contrast outcomes for CBT with outcomes for various control groups for each disorder, which provides an overview of the effectiveness of cognitive therapy as quantified by meta-analysis.

出典: pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

「感情はどこからくるのだろう」「今、自分はなぜこの行動をしているのだろう」など、自分の感情や思考に焦点を当てて、考えを正しい方向に修正し、課題を解決します。

今回は、認知行動療法の基本的な方法や効果をご紹介します。

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認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy techniques)とは

認知行動療法とは、「精神障害や心理的苦痛は、認知的要因によって維持される」という考え方を前提とする治療法で、BeckとEllisによって提唱されました*2

 

不適切な認知が、情緒的苦痛や行動が問題を引き起こすと考えられており、Beckの提唱モデルでは、不適応な認知を変えるための治療戦略が、情動的苦痛や問題行動の変化につながると考えられています。

 

同じ出来事でも人それぞれ認知が異なります。

 

例えば、「職場で上司に挨拶をしたら、無視された」という出来事に対して、「あれ、私昨日何か上司を怒らせることをしたかな」という認知をします。

 

これに対して、「落ち込み、自己嫌悪」という感情が続き、一日中元気がなくなります。

 

そして、「ちょっと上司と話すことはやめておこう」と、上司とのコミュニケーションを避ける、という行動にでます。

 

しかし、この出来事に対して、「上司は何か考え事をしていて、私の声が聞こえていなかっただけかもしれない」と考えると、上司とのコミュニケーションを避けるというマイナスの行動にはならないかもしれません。

 

「気にするな」と言われればそこまでですが、出来事に対する自分の認知の捉え方で、感情や行動が変わってきます。

 

このような、認知の歪みが起こることで生じる、うつ病や、不安障害などの精神疾患を解決するために、感情や行動を変えることを促す、ということが認知行動療法の基本的な考え方になります。

認知行動療法の効果

ここでは、さまざまな疾患に対する認知行動療法の効果を紹介します。

 

認知行動療法は、統合失調症の陽性症状(妄想や幻覚)に対して有益な効果を示すことが報告されています*3

 

慢性的な症状ではなく、精神病の急性的な症状で苦しんでいる精神分裂病患者にとって、薬物療法の補助として特に有効であるといわれています*4

 

さらに、うつ病と気分変調症にも効果を示すことが知られており、うつ病に対する認知行動療法は、心理力学的治療、問題解決療法、対人関係心理療法などの他の治療法と比較しても、有意な効果が得られています*5

 

うつ病は、脳の前頭葉の機能が低下しているのですが、最近の研究によると、認知行動療法は、脳の前頭葉の機能を改善することがわかりました。

 

さらに薬物療法と認知行動療法の併用により、より効果をもたらすことが報告されています*6

 

認知行動療法は、パーソナリティ障害の治療においても効果が示されています。

 

特に社会のルールを破り、他人を欺いたりすることに罪悪感を持たない、反社会性パーソナリティ障害とコカイン依存性を罹患している者に対し、認知行動療法を試した結果、精神の安定と、コカイン使用の点で、より効果的であることが示唆されました。

 

しかし、境界性パーソナリティ障害に対する認知療法の有効性は今後の課題であるといわれています*7

 

感情のコントロールにおいて「怒りを抑えられない」ことが問題視されていますが、最近の研究では、認知行動療法と怒りのコントロール問題と攻撃性に焦点が当てられています*8

 

運転中の怒り、怒りの抑制、怒り表現の困難さなど、さまざまな怒りの問題に対する認知行動療法を試した結果、被験者の怒りレベルが抑制することがわかりました。

 

また、認知行動療法は、妊娠合併症と女性ホルモンにも影響を示すことが報告されています。

 

周産期うつ病や、産後うつ病に対して認知行動療法が効果的であることが示されていますが*9、これらの研究ではうつ病と妊娠、ホルモン変化との因果関係はまだ明らかになっていません*10

月経前症候群(premenstrual syndrome : PMS)の治療については、認知行動療法が、P M Sに関連する抑うつ症状と、不安症状を有意に減少させることを明らかになりました*11

 

認知行動療法は、大人だけでなく、子どもに対しても効果を示すことが報告されています。

 

交友関係や家庭生活、学校での生活に不安を抱える、小児および青年の不安障害の治療において、認知行動療法を優先的に用いることが支持されています*12

 

さらに、強迫性障害に対する認知行動療法は、他の心理社会的治療や薬物治療と比較して、有意に良好な結果をもたらしました*13

 

しかし、これまで多くの効果が示されてきた認知行動療法ですが、高齢者の不安障害については、あまり顕著でないことが報告されています*14

認知行動療法の種類

認知療法の一つとして、上記に記載した、「不適切な認知が、情緒的苦痛や行動が問題を引き起こす」という考えを提唱しているBeckが考案したうつ病の認知療法を紹介します*15

 

ベックの認知療法は、「自動思考」と「スキーマ(中核的信念)」という概念に着目する療法です。


自動思考とは認知の形の一つで、何かの出来事が起きた時、瞬間的に浮かぶ思考のことをいいます。

 

例えば、仕事の締め切りが近い時に、自動思考は「ヤバイ、間に合わないかもしれない、引き受けなければよかった」というものです。


そして、自動思考のもとになっているスキーマは、「自分には能力がない」という考えを示します。この自動思考によって、感情や行動が変化しており、普段意識することのない「スキーマ」の偏りに意識を向けることで、さまざまな精神疾患の治療にも役立つと言われています。

 

認知行動療法(C B T)のなかでも、特に効果が示され、最近頻繁に行われているのが、アクセプタンス&コミットメント・セラピー(Acceptance and commitment therapy:ACT)、通称「アクト」と呼ばれている心理療法です*16

 

アクトは、思考や感情を変えようとせず「あるがままが良い」とする新しい世代の認知行動療法です。

 

通常の認知療法は、認知の歪みを正すことで合理的な考え方に持っていこうとします。

 

しかし、アクトは、認知の歪みを修正するのではなく、その状況を受け入れ、コントロールしようとするのではなく、状況と距離をとるという特徴があります。

 

認知行動療法では対処が難しい、コミュニケーション能力、いわゆる社交性といわれるものに対して、アクトは効果があることが報告されています。通常の認知行動療法で、認知の歪みを修正するだけでは、「コミュ障」は治らないことが明らかになっています。

 

なぜなら、社交不安が強い人ほど、コミュニケーションにともなう「緊張感」や「不安感」を避ける傾向があるため、これがコミュ障の軽減をさまたげる大きな要因になってしまうのです。

緊張感から目をそむけて、目をそむけようと頑張るせいで、逆に「緊張感」に意識が向かい、意識が向いたせいで「緊張感」が必要以上に誇張され、コミュ障が悪化するという悪循環が生じてしまいます。

 

ダイエットでいうと、目の前チョコレートがあり、それを意識しないように頑張っていると、逆に食欲が湧いてきてしまい、食べてしまうという現象に似ています。

 

これに対して、アクトは、思考を強引に変えることをせず、ただただ状況を受け入れ、見守ります。アクトは、コミュニケーションにともなう不安と緊張を受け入れられるようになるため、是非試してみてください。

 

認知行動療法のなかに、マインドフルネスという療法もあります*17

 

マインドフルネスとは、自分の体験を客観的に観察する方法のことを言います。知覚、思考、感情、行動を「今この瞬間を、あるがままに受容する」ことで、心と体のストレス耐性を上げていくトレーニング方法の一つです。

 

アクトと似ていますが、古くから瞑想という形で行われてきたこの療法は、近年、治療効果を向上させる手法として人気療法となっています。

認知行動療法の流れ

認知行動療法は、お医者さんや、専門のカウンセラーのもとで受けられます。まずは、精神科や、メンタルクリニックなどで診察しましょう。

 

うつ病や不安障害、統合失調症、不眠症、パーソナリティー障害、摂食障害など、認知行動療法を受けることができる疾患はさまざまです。

 

これらに対する薬物療法と、認知行動療法の併用は効果的であることも報告されています。

 

認知行動療法は、疾患の回復力の高さと、再発の低さが報告されており、副作用のないことや、実際にうつ病なりかけという方などに対する予防的な効果も示すため、有効的な療法です。

 

疾患によって、保険適用もしくは、適用外の場合があるため、お医者さんに確認することをおすすめします。

 

また、認知行動療法のなかには、集団認知行動療法があり、複数人数でセラピーを受けることもできます。

 

グループで行うことによって、客観的に自分のことを知ることができ、また、他人の話を聞くことで、モデリング効果も報告されています。

さいごに

FIRE CLINICのダイエットサポートは認知行動療法を取り入れております。こちらの記事も是非ご覧ください!

 

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参考文献

*1Butler, A. C., Chapman, J. E., Forman, E. M., & Beck, A. T. (2006). The empirical status of cognitive-behavioral therapy: A review of meta-analyses. Clinical Psychology Review, 26, 17–31.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16199119/

*2Ellis, A. (1962). Reason and emotion in psychotherapy. New York: Lyle Stuart.

https://psycnet.apa.org/record/1963-01437-000

*3Gould, R. A., Mueser, K. T., Bolton, E., Mays, V., & Goff, D. (2001). Cognitive therapy for psychosis in schizophrenia: An effect size analysis. Schizophrenia Research, 48, 335–342.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/11295385/

*4Zimmermann, G., Favrod, J., Trieu, V. H., & Pomini, V. (2005). The effect of cognitive behavioral treatment on the positive symptoms of schizophrenia spectrum disorders: A meta-analysis. Schizophrenia Research, 77, 1–9.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16005380/

*5Van Straten, A., Geraedts, A., Verdonck-de Leeuw, I., Andersson, G., & Cuijpers, P. (2010). Psychological treatment of depressive symptoms in patients with medical disorders: A meta-analysis. Journal of Psychosomatic Research, 69, 23–32.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18068284/

*6Chan, E. K.-H. (2006). Efficacy of cognitive-behavioral, pharmacological, and combined treatments of depression: A meta-analysis. Calgary: University of Calgary.

https://psycnet.apa.org/record/2006-99020-103

*7 Binks, C., Fenton, M., McCarthy, L., Lee, T., Adams, C. E., & Duggan, C. (2006). Psychological therapies for people with borderline personality disorder. Cochrane Database of Systematic Reviews, 1, CD005652.

https://www.cochranelibrary.com/cdsr/doi/10.1002/14651858.CD005652/abstract

*8 Del Vecchio, T., & O’Leary, K. D. (2004). Effectiveness of anger treatments for specific anger problems: A meta-analytic review. Clinical Psychology Review, 24, 15–34

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/14992805/

*9Sockol, L. E., Epperson, C. N., & Barber, J. P. (2011). A meta-analysis of treatments for perinatal depression. Clinical Psychology Review, 31, 839–849.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21545782/

*10Dennis, C.-L., & Hodnett, E. D. (2007). Psychosocial and psychological interventions for treating postpartum depression. Cochrane Database of Systematic Reviews, 4, CD006116.

https://www.cochranelibrary.com/cdsr/doi/10.1002/14651858.CD006116.pub2/abstract

*11Busse, J. W., Montori, V. M., Krasnik, C., Patelis-Siotis, I., & Guyatt, G. H. (2009). Psychological intervention for premenstrual syndrome: A meta-analysis of randomized controlled trials. Psychotherapy and Psychosomatics, 78, 6–15.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/18852497/

*12Santacruz, I., Orgilés, M., Rosa, A. I., Sánchez-Meca, J., Méndez, X., & Olivares, J. (2002). Generalized anxiety, separation anxiety and school phobia: The predominance of cognitive-behavioural therapy/Ansiedad generalizada, ansiedad por separación y fobia escolar: el predominio de la terapia cognitivo-conductual. Behavioral Psychology/Psicología Conductual, 10(3), 503–521.

https://www.researchgate.net/publication/289408595_Generalized_anxiety_separation_anxiety_and_school_phobia_The_predominance_of_cognitive-behavioural_therapy

*13Phillips, A. S. (2003). A meta-analysis of treatments for pediatric obsessive-compulsive disorder. Manhattan, Kansas: Kansas State University.

https://www.proquest.com/openview/c4a782cbb942508b0ff41d65052df526/1?cbl=18750&diss=y&pq-origsite=gscholar

*14Thorp, S. R., Ayers, C. R., Nuevo, R., Stoddard, J. A., Sorrell, J. T., & Wetherell, J. L. (2009). Meta-analysis comparing different behavioral treatments for late-life anxiety. The American Journal of Geriatric Psychiatry, 17, 105–115.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19155744/

*15Beck, A. T. (1970). Cognitive therapy: Nature and relation to behavior therapy. Behavior Therapy, 1, 184–200.

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0005789470800302?via%3Dihub

*16Raimo Lappalainen et al.,2007, The Impact of CBT and ACT Models Using Psychology Trainee Therapists: A Preliminary Controlled Effectiveness Trial

https://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1177/0145445506298436

*17Hannah Woolhouse  et al, Adding Mindfulness to CBT Programs for Binge Eating: A Mixed-Methods Evaluation,15 (2012):321-339

https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/10640266.2012.691791

PROFILE

江越 正敏
江越 正敏FIRE CLINIC総院長
2017年 佐賀大学医学部 卒業
2017年 都立松沢病院 勤務
2019年 都立多摩総合医療センター 勤務
2020年 FIRE CLINIC新宿院 開院
2021年 渋谷院、銀座院開院
2023年 新宿、渋谷、銀座、名古屋の4院に展開しFIRE CLINIC総院長を務める。
2024年 公益財団法人ルイ・パストゥール医学研究センター 再生医療研究室 特任研究員

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