脂肪吸引のリスクとは?ダイエットに本当に必要なの?
体内の脂肪を直接取り除く施術として脂肪吸引があります。
脂肪吸引は近年の痩身治療が注目されることもあり、2015年には190万件の美容外科手術が行われ、手術件数は、1997年から94%増加しています*1。
最近では、長年にわたる脂肪吸引技術の進歩により、手術に伴うリスクは減少し、安全性も向上しています。しかし、他の手術と同様に、脂肪吸引後は、重大な合併症が発生する可能性があります。
この記事では脂肪吸引を行う前に知っておきたいリスクについて医学従事者の観点からご紹介します。
FIRE CLINICはダイエットを専門とするクリニックです。ダイエットのお悩みの方はまずは無料カウンセリングでご相談ください。
ファイヤークリニック
Contents
脂肪吸引とは
脂肪吸引とは、皮膚を数mm程度切開したところから、局所麻酔薬(リドカイン)を含む溶液を皮下組織に注入した後、皮下脂肪を特殊な吸引管(カニューレ)で取り除く手術のことです*3。
一般的に行われる方法は、チューメセント法と呼ばれる皮下脂肪に大量の液体(輸液)を浸透させて組織を膨らませて固めるもので、使用している輸液は通常、500~1000mgのリドカイン、0.25~1.0mgのエピネフリン、12.5mmolの炭酸水素ナトリウムを含む1リットルの生理食塩水で構成されています。
麻酔の方法には「意識下での鎮静」、「硬膜外麻酔」、「全身麻酔」の3種類があり、痛みを最も感じにくい麻酔は全身麻酔です。意識下での鎮静は痛みを感じにくいですが、意識がはっきりしているため、不安になられる方や稀に痛みを感じるケースがあります。
多くのクリニックではいずれかを選択することができるので、手術に不安のある方も脂肪吸引の部位や麻酔の方法を調整することで安心して受けられるといいでしょう。
脂肪吸引を行う前に、皮下脂肪に大量の希薄なリドカインとエピネフリンを注射します。この事前注入は、局所麻酔と術後の痛みの軽減につながります。結果、失血、あざ、腫れが大幅に減少します。著者の経験では、静脈内鎮静と組み合わせることで、患者は最も快適になります。
また、脂肪吸引後は、傷口も小さく、最近ではダウンタイムも軽減されているため、施術される方が増えています。
痩身エステやフィットネススポーツジムなど、ダイエット目的の施設は増加していますが、費用面を考えても、総合して脂肪吸引が安いことも魅力の一つといわれています。
ダイエットと脂肪吸引の違いは、脂肪細胞へのアプローチ方法です。ダイエットでは、元々持っている脂肪細胞の数を小さくすることで痩身します。
一方で脂肪吸引は、脂肪細胞の数自体を減らすことができるため、脂肪細胞が少なくなり、結果として脂肪細胞が蓄積せず、リバウンドの抑制につながります。
脂肪吸引は、皮下脂肪に悩んでいる人や、部分的に脂肪を取りたい人、また、ダイエットとリバウンドを繰り返しており、なかなか痩せることができない人に人気な施術法になります。
脂肪吸引による後遺症はある?
脂肪吸引の後遺症には、皮膚の表面が凸凹になってしまい、見た目が不自然になるというものが挙げられます*18。
さらに、脂肪吸引をしたところの皮膚がたるんだり、バランスが不自然になってしまったりする症例も多々見られます。
原因は、脂肪吸引の機械の古さや、美容外科医の技術力が報告されています。皮膚表面凸凹を取り除く方法として、形や長さ、種類の異なるカニューレを使用するというものがあります。
カニューレを脂肪吸引部位によって使い分けています。脂肪は取ればいいというものではなく、いかに自然な形で美しく脂肪吸引をするかが重要になります。
また、脂肪吸引では「そんなに痩せないのでは?」ともいわれています。
脂肪吸引は皮下脂肪にアプローチするため、二の腕や背中など部分痩せを確実に行うことができますが、内臓脂肪は取り除くことができません。
そのため、あくまで脂肪は内臓脂肪を含めたものであり、皮下脂肪を取り除いた後でも「あまり痩せていないのではないか」と効果を実感できない方もいらっしゃるようです。
これらの改善策として、脂肪吸引後のご自身の脂肪の減少イメージを具体的にお医者さんに伺うことをおすすめします。
最近では、整形後の仕上がりを確認するための3Dシミュレーターがあり、3D画像を180度回転させながら、脂肪吸引の仕上がりを相談することができます*19。最新機器を使用し、脂肪吸引後の身体の様子をきちんとイメージしておく必要があります。
脂肪吸引で注意することは、まずはしっかりとカウンセリングを受けることです。
クリニックによっては、カウンセラーと担当する美容外科医が異なる場合もあるため、事前の確認が必要です。また、脂肪吸引は、意図的に脂肪を掻き出すという壮大な手術であるため、上記に挙げたリスクがあることも忘れてはいけません。
もちろん、後遺症が生じてしまった場合も、クリニックによっては、修正手術を行っているところもあります。しかし、身体のことを考慮して、手術は一度におさめることを考え、脂肪吸引をする際には、慎重にクリニックや担当医選びを行いましょう。
脂肪吸引のリスクと原因を実際の事故例から解説
現在、脂肪吸引の安全性については、いくつかの研究が行われており*5、2000年に形成外科医1200人を対象に行われた調査では、死亡率は10万人あたり19.1人で、そのうち脂肪吸引手術の47415例中、死亡事故は1例と報告されています。
確率としては低いですが、死亡事故という大変重たい話です。
最も頻繁に報告された(脂肪吸引の)術後イベントは、悪心/嘔吐でした(98回ごとに1回、1.02%)。また、最も頻繁に報告された主要な合併症は皮膚の脱落でした(または1107ごとに1回、0.0903%)。全部で0.2602%の割合で、245回の主要な合併症がありました。なお、脂肪形成術に関連する死亡はまれでした。死亡率は0.0021%、つまり47,415回の手術につき1回でした。
出典: academic.oup.com
実際の事故例を用いて、脂肪吸引のリスクを解説します。
ケース①:肺血栓塞栓症
過剰脂肪吸引術の手技は,リドカインを含んだ溶液を皮下注入したあと,微小カニューレから脂肪を吸引する.リドカインの推奨用量は体重当り 55 mg/kgという高用量であるが,安全性のデータはほとんど入手されていない
1993~98 年に,ニューヨーク市検視局(Office of Chief Medical Examiner)に報告された 48,527 件の死亡から,5 件の過剰脂肪吸引術後の死亡を確認した.これらに共通した寄与因子を同定するために,患者の医療記録と剖検の検査結果の再検討を行った.
この 5 例には,10~40 mg/kg のリドカインが投与されていた.ミダゾラムのような他の薬剤も投与されていた.このうち 3 例は,手術中の急激な血圧低下と除脈の結果として死亡していたが,死因については明確に特定されていなかった.この 3 例のうち 2 例は,死亡後のリドカインの血中濃度がそれぞれ 5.2 mg/L,2 mg/L であった.残りの 1 例は体液の過負荷による死亡で,もう 1 例は下肢の過剰脂肪吸引術後の肺血栓塞栓症を伴った深部腓静脈血栓症による死亡であった.
出典: www.nejm.jp
死亡例の主な原因は、肺血栓塞栓症(23.4%)と報告されています*6。
肺血栓塞栓症とは、長時間の手術によって足に血がたまり、手術後に血流が回復することで足に出来た血栓が流れ出し、肺に転移することによって死に至ります。
ケース②:腹膜炎
腹部の脂肪吸引手術をする際、皮下脂肪に挿入した吸引管の先端の位置を十分確認しないまま操作して腹壁や腸を傷つけ、2日後に脱水症で死亡させた。
出典: www.nikkei.com
脂肪吸引が原因で起こる死亡事故の代表的な例は、吸引管(カニューレ)による腹腔内貫通からの腹膜炎です。
これは、外科医が皮下脂肪を吸引するのを誤って、お腹のなかをカニューレで挿してしまうという行為です。カニューレが腹筋を通り越してしまうため、腸管の中の腸内細管や、便がお腹の中に漏れて腹膜炎を起こして死に至ります。
10万人の患者を対象とした研究では、腹膜炎による死亡率は 5,000 人に 1 人でした*7。
上記の事例は腹膜炎によるものではないですが、腹部の脂肪吸引で腹壁や腸を傷つけ死亡した事故です。腹膜炎も腹部の脂肪吸引で腸管を傷つけてしまうことによって発生するため同じく注意が必要です。
ケース③:麻酔事故
美容外科クリニックでの脂肪吸引手術中に,患者が心肺停止状態となり,蘇生後脳症となったことについて,執刀医の麻酔管理上の注意義務違反を認めた事例
出典: www.hanta.co.jp
判例タイムズ 1415号 10月号 (2015年09月25日発売)では、脂肪吸引中の心肺停止の事例が掲載されています。
手術は硬膜外麻酔、静脈麻酔、吸入麻酔で行われ、手術中に「フェンタニル」「プロボフォール」が追加投与されたそうですが、その後に舌根沈下によるイビキ様呼吸でSpO2が68%まで低下したとのこと。その後の管理が甘く、心肺停止になってしまったようです。
また、硬膜外麻酔の事故では、背中から麻酔液を流して、流した範囲に麻酔かけるのですが、麻酔の量多すぎるもしくは、くも膜にまで到達してしまい、呼吸器が止まってしまった結果、死亡するという事例も報告されています*11。
さらに、多い事例が、局所麻酔中毒による死亡事故です。かける麻酔の量が多すぎて、手術中に患者が痙攣して呼吸が止まってしまいます*12。
脂肪吸引でとくに注意すべき3つのポイント
脂肪吸引でのリスクを下げるために、注意すべき3つのポイントをまとめました。
1:吸引量
大量脂肪吸引は、たくさんの量の脂肪を一気に吸引をすると体に負担がかかります。
アメリカ美容外科学会(AACS)、アメリカ形成外科学会(PSTM)、アメリカ皮膚外科学会(AAD)の3つの専門学会では、脂肪吸引のプロトコルにおいて、施術の安全性に関して脂肪吸引量の目安は5リットルを推奨しています*13。
しかし、現在のデータでは、この吸引量に確証がないため、3リットルの吸引量を目安にしているお医者さんが多いです。
あくまでも目安ですが、一気に大量の吸引を推奨してくる場合は一旦持ち帰り、他のクリニックでも相談してみましょう。
2:薬剤に対するアレルギー
脂肪吸引のその他のリスクとして、薬剤に対するアレルギー反応、嘔吐、皮膚の壊死、心臓・呼吸器障害、感染症、出血なども挙げられます。*14
しかしこれらの脂肪吸引時の死亡事故は、美容外科医の技術不足が原因であるため、きちんと管理をしていれば起こらないといわれています。
現在アレルギーがなくても突然発症する可能性もあるため、カウンセリングの際にアレルギーのリスクについても確認しておきましょう。
3:その他施術を併用する場合
脂肪吸引単独での死亡率ははるかに低いと思われますが、脂肪吸引が他の整形手術と組み合わされた場合、脂肪吸引による死亡リスク率は7,314分の1に増加し、そのなかでも特に、腹壁形成術と組み合わされた場合は3,218分の1になると報告されています*10。脂肪吸引単独の場合よりも14倍高いです。
死亡事故に至らない場合も、輪郭の乱れや予定外の入院、腫れの長期化などの重大な合併症が発生していると報告しています*15。
腹壁形成術とは、脂肪吸引後に余った皮膚を切除し、垂れ下がった脂肪を取り除く手術です。患者によっては、お腹の筋肉の引き締めが必要になることもあります。
腹部形成術後の男性に多い合併症に、腹腔内圧の上昇に伴う重度の胃食道逆流があります。これは、男性特有の局所的な肥満が女性よりも発症率を高めていることが原因でないかといわれています*16。
さらに、腹部形成術をされる方にとって、重大なリスクは「喫煙」です。腹部形成術の合併症率は、喫煙者、糖尿病や高血圧症の患者で有意に高くなることが報告されています*17。
喫煙者では明らかに、術中や術後の肺、心血管、脳血管の合併症などの多くが悪影響を受けています。
さらに、脂肪吸引後に傷口の治りが遅くなるこ原因は、タバコの有効成分であるニコチンによる血管収縮と、組織虚血によるものと考えられており、傷口が塞がる、閉鎖張力が非喫煙者に比べて、高リスクとなっていることが問題視されています。
脂肪吸引のリスクを避けるには
脂肪吸引のリスクを避けるには実績豊富なクリニック、医師を選ぶことが大切です。
1:実績豊富な医師へお願いする
医師を選ぶ際のポイントは上記の通り。脂肪吸引メスを使用するため、美容外科医歴だけでなく形成外科での経験がある医師が望ましいです。
また、美容外科医歴・形成外科医歴だけでなく、脂肪吸引の治療経験年数も重要なポイント。脂肪吸引自体の経験が豊富な医師は、内部の組織や血管を傷つけることなく吸引でき、術後の回復も早い傾向にあります。
脂肪吸引の医師選びでは、症例の綺麗さや好みだけでなく、身体への負担も考えながら慎重に選ぶのが何よりも大事です。
脂肪吸引は死亡事故の事例もあるリスクの高い施術ですが、経験豊富で実績のある医師へお願いすることでリスクを最小限に減らせます。
2:麻酔科医が在籍するクリニックを選ぶ
全身麻酔の事故も、脂肪吸引の死亡原因の多くを占めています。
通常、手術の際は、専門の麻酔科医が麻酔をかけるのが一般的です。しかし美容外科では、専門の麻酔科医が在籍しておらず、手術を担当する美容外科医が手術と同時に麻酔をかけるケースがあります。
そのケースでは、人工呼吸器が停止していたり、チューブが外れて麻酔がかかっていなかったりなど、美容外科医が手術に集中している間に起きたトラブルに気付かないというミスが報告されています。
事実、BBCニュースでヒップアップの形成手術で、3000人に一人死亡している事を報道しています。
Baaps told the BBC’s Victoria Derbyshire programme an estimated one in 3,000 die worldwide as a result of complications.(英国美容整形外科医協会(Baaps)は、ブラジリアンバットリフトの合併症の結果として世界中で3,000人に1人が死亡すると推定していると語った。)
出典: www.bbc.com
脂肪吸引リスクを最小限にするためにも、手術時は、専門の麻酔科医が麻酔をかけてくれるのかどうか、事前調査することをおすすめします。
3:脂肪吸引以外の部分痩せ施術も検討する
部分痩せの治療方法は、脂肪吸引以外にも選択肢があります。
脂肪吸引と同様に広範囲の部分痩せを希望するなら医療痩身機器を使った施術もおすすめです。医療痩身機器にもさまざまな種類がありますが、当院では脂肪を凍らせて破壊する脂肪冷却装置を取り扱っています。
脂肪冷却装置も脂肪を体外へ排出するため、脂肪吸引と同じく施術部位のリバウンドリスクは少ない施術です。
即効性や細かいボディラインの調整は脂肪吸引が向いていますが、身体への負担が心配な方は脂肪冷却も合わせてご検討ください。
また、小範囲の部分痩せを希望する方には、脂肪溶解注射もおすすめです。ダウンタイムも少なく、医療痩身機器に比べ効果を実感するまでの期間も短く済みます。
部分痩せの方法は脂肪吸引に限らないので、リスクや予算、求める効果を考慮してご自身に合った方法をお選びください。
まとめ
ファイヤークリニックでは、少しでも患者様の危険を減らすため、メスを入れない痩身を行っております。
脂肪吸引の効果と、ご自身にとってのメリット・デメリットを考えて、痩身で選択できる方法を幅広く検討してみてくださいね。
詳しいご相談はFIRE CLINICまでご来院ください。
ファイヤークリニック
参考文献
*1Cosmetic surgery national data bank statistics. Aesthet Surg J. 2016;36(Suppl 1):1-29.
*14ACS 80801. 2001 Chicago The American Academy of Cosmetic Surgery; 2001.
*18Tamara Salam Housman, The Safety of Liposuction: Results of a National Survey, 28(2002): 971-978
PROFILE
-
2017年 佐賀大学医学部 卒業
2017年 都立松沢病院 勤務
2019年 都立多摩総合医療センター 勤務
2020年 FIRE CLINIC新宿院 開院
2021年 渋谷院、銀座院開院
2023年 新宿、渋谷、銀座、名古屋の4院に展開しFIRE CLINIC総院長を務める。
2024年 公益財団法人ルイ・パストゥール医学研究センター 再生医療研究室 特任研究員
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