乾燥以外の肌への影響~黄砂などの汚染物質やブルーライト

はじめに

洗顔後の保湿はもちろん、毎日規則正しい生活をしているのにどうしても肌荒れが気になってしまう。実はその肌荒れ、意外なところに原因が隠されているかもしれません。

肌荒れの原因は様々です。今回は黄砂のような汚染物質や、太陽光などにも含まれるブルーライトが肌に与える影響について解説します。

1.汚染物質と肌荒れの関係性

1-1. 黄砂とは?PM2.5とは違う?

天気予報でも最近、特に3月~5月の春にかけて黄砂の情報を耳にする機会も多いのではないでしょうか。黄砂は、中国の乾燥地域から吹き上げられた土壌や鉱物粒子が、風に乗って日本へやってきます。

黄砂にはアンモニウムイオンや硝酸イオンなども含まれており、日本に運ばれてくる間にも環境要因が複雑に作用することで物理的・化学的変化を繰り返します。輸送されてくる途中で、自然起源ではなく、人為起源の汚染物質を吸い込んでいる可能性が指摘されています。

黄砂とよく似たものにPM2.5があります。PM2.5は大気中に浮遊する小さな粒子のことで、自動車や航空機、工場などから排出されるばい煙に含まれております。

PM2.5は直径が2.5μm以下の微小粒子物質と定義されていますが、日本に飛来する黄砂の大きさは直径1~30μm程であり、黄砂の中でも直径2.5μm以下の大きさのものはPM2.5に該当します。

ちなみに春に浮遊するものといえば、花粉です。スギやヒノキのような代表的な花粉の大きさは、直径30μm~40μmと黄砂やPM2.5と比較しても非常に大きいです。

これら3つの汚染物質は、アレルギーや呼吸器疾患と関連性があるというイメージがありますが、実は肌荒れとも密接に関係しているのです。特に飛散量が多い春は要注意です。

1-2.汚染物質が肌へ与える影響

黄砂などの汚染物質は人体に悪影響を及ぼしますが、肌も例外ではありません。黄砂は様々なイオンの他に、微生物の死骸や化学物質のような多くのアレルゲン(アレルギー症状をもたらす原因物質)を含んでいます。中国大陸から日本へ飛来する間も、工場から出る煙や自動車の排気ガスなどに含まれる有害物質が、黄砂に付着する場合もあります。

これらの有害物質の運び屋となり、人間の肌に付着してしまう黄砂には注意が必要です。

少し専門的な話にはなりますが、黄砂,、PM2.5のような大気粉塵、排気ガス、スギ花粉の4種類に着目し、これらの大気有害物資が皮膚に与える影響を研究しました。

その結果、4種の有害物質すべてがインターロイキン8と呼ばれる皮膚炎症を引き起こす因子の産生を促進することが明らかとなりました。また黄砂と花粉は、かゆみやアトピー性皮膚炎の発症の原因となるインターロイキン33の発現を増大させることも確認されました。

1-3. 汚染物質から肌を守るための対策

黄砂や他の汚染物質から肌を守る対策は共通しています。代表的なものを3つ紹介します。どれも基本的なことばかりですので、今すぐにでも始められるのではないでしょうか。

①外出時はマスクを着用

新型コロナウイルスの影響で、外出中はマスクを着けるようになりましたが、マスクは細菌やウイルスだけでなく、汚染物質からも身を守ってくれます。普段のマスク着用が、効果的な対策になっています。

②帰宅後はすぐに洗顔、クレンジング

外出中にマスクを着用していても、肌への付着を完全に防ぐことはできません。帰宅後はすぐに洗顔やクレンジングで、物質を早く落とすことが大切になります。

③洗濯物の外干しを控える

飛散量が多い日は、できるだけ洗濯物の外干しは控え、部屋に持ち込まないようにしましょう。部屋に持ち込まないためには、②の素早く落とすことや、空気清浄機などで除去することも効果的です。

つまり、

・物質が肌に付着しないようにする

・付着してしまったら落とす

単純ですが、これらが最も有効な方法になります。

2.ブルーライトの肌に与える影響は

2-1.ブルーライトとは

ブルーライトとは可視光線(人の目で見える光)の中に含まれており、波長380nm~500nmと非常に短い波長の光のことをいいます。波長とは波の一つ分の長さのことで、人は波長の長さによって見える色が変化します。赤や橙色は波長が長く、紫や青では短くなっています。

つまり言葉の通り、紫外線やブルーライトは波長が短く、赤外線の波長は長いということになります。

物理学の世界では一般的に、光の波長の長さと光に含まれているエネルギー量は反比例の関係にあると言われています。すなわち、波長が短い光ほどエネルギー量が多く、目や身体に与える刺激が大きくなるということです。

ブルーライトは紫外線の波長にもっとも近く、強いエネルギーを持つ光です。紫外線は日焼けの原因にもなり、皮膚に与える影響が大きいことは知られていますが、ブルーライトも第3の紫外線と言われるほど人体への影響が懸念されています。

では、ブルーライトはどこに多く含まれているのでしょうか。

ブルーライトは、パソコンやスマートフォンの画面から発せられるイメージがあると思います。しかし意外にも、これらの電子機器よりも多く含まれているのが紫外線と同様、太陽光になります。

2-2.ブルーライトが肌にダメージを与えるメカニズム

最近では、ブルーライトは目以外にも肌に与える影響も大きいことが知られるようになりました。

2018年5月の国際皮膚科学会議で、以下の研究結果が明らかとなりました。

①ブルーライトは活性酸素の産生を2倍に増加させる。

活性酸素は体内における代謝過程で、様々な成分を酸化させます。本来はウイルスや細菌を殺してくれる役割を果たしていますが、過剰に産生されると非常に強い力で酸化し、正常な遺伝子や細胞を傷つけてしまいます。結果として老化促進やシワの増加、細胞内ではメラニンが異常に増殖してしまいます。

②時計遺伝子「PER-1」の発現が低下し、皮膚本来の夜間の細胞修復機構が阻害される。

一つ一つの皮膚細胞の中には、時計遺伝子と呼ばれる遺伝子群が存在しており、その遺伝子群が肌を最適な状態に保とうと細胞活動のサイクルを調整しています。ブルーライトは、遺伝子群の一つであるPER-1の発現を低下させ、皮膚細胞が夜の活動サイクルに入るのを阻害することが示されました。

つまり、PER-1の活性が低下すると、皮膚細胞の本来の概日リズム、いわゆる体内時計がくくい、夜の修復作用が開始できなくなってしまいます。結果として、活性酸素などの産生が2倍以上増加し、DNAの損傷も50%以上増加しました。

このように、①の活性酸素の増加は、PER-1の発現低下が大きく関係していることが明らかとなりました。そしてこのブルーライトの影響は、照射後も長時間受けることが指摘されました。

以上の研究結果以外にも、ブルーライトは肌のターンオーバーにも影響するとも言われています。ターンオーバーとは肌の代謝のしくみで、皮膚の最も外側にある表皮で細胞が生まれ変わることを言います。つまり古くなった角質が排出され、新しい細胞へと入れ替わる、このサイクルが繰り返し行われます。

ターンオーバーの乱れは、睡眠不足やストレスのような毎日の生活習慣との関連が指摘されています。しかし、ブルーライトを浴びることで自律神経のバランスの乱れが生じ、睡眠の質が低下して肌のターンオーバーがうまく機能しなくなります。その結果、肌荒れやニキビ、肌の老化といった肌トラブルを引き起こします。

このようにブルーライトは、自律神経の乱れを通してを間接的に肌へ悪影響を及ぼすことが知られています。

2-3.汚染物質から肌を守るための対策

①抗酸化作用のある食材を摂取する

活性酸素が大きく影響していることから、それに対抗するために抗酸化作用がある食材を積極的に摂取するようにしましょう。ビタミンA・C・Eが、抗酸化作用のあるビタミン群になります。

②ブルーライトカットに効果的な化粧品を使用する

最近では紫外線をブロックするだけでなく、ブルーライトカットの化粧品や日焼け止めクリームも販売されています。普段の生活で使用してみてはいかがでしょうか。

③電子機器からのブルーライトをカットする

スマートフォンをナイトモードに設定する、パソコンにブルーライトカットシートを貼るなど、身近でできる対策を実践しましょう。

ブルーライトカットレンズのメガネを使用し、目から防御することも肌に対して効果的です。

さいごに

少し専門的な内容にも触れましたが、黄砂のような汚染物質や、ブルーライトが肌へ与える影響は大きいことが明らかになっています。原因不明の肌トラブル、実はこれらが関係しているのかもしれません。

対策もいくつか紹介しましたが、基本的な考え方としては、肌への暴露をいかに減らすかということです。すぐに実践できるものばかりですので、是非皆さんも試してみてはいかがでしょうか。

ファイヤークリニック

PROFILE

江越 正敏
江越 正敏FIRE CLINIC総院長
2017年 佐賀大学医学部 卒業
2017年 都立松沢病院 勤務
2019年 都立多摩総合医療センター 勤務
2020年 FIRE CLINIC新宿院 開院
2021年 渋谷院、銀座院開院
2023年 新宿、渋谷、銀座、名古屋の4院に展開しFIRE CLINIC総院長を務める。
2024年 公益財団法人ルイ・パストゥール医学研究センター 再生医療研究室 特任研究員

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